こんな二人
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)太古《たいこ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)のんき[#「のんき」に傍点]
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一人は太古《たいこ》からかれない泥沼の底の主、山椒《さんせう》の魚《うを》でありたいといひ、ひとりは、夕暮、または曉に、淡く、ほの白い、小さな水藻《みづも》の花《はな》でありたいと言ふ、こんな二人。
一人は澎湃奔放《はうはいほんぱう》たる濁流を望《のぞ》み、ひとりは山影《やまかげ》の苔清水《こけしみづ》をなつかしむ。
『水《みづ》清《きよ》ければ魚すまず、駄目だよ。』
『そのかはりに月影が澄む。』
山椒《さんせう》の魚《うを》たる主人と、清からんとして、山椒《さんせう》の魚《うを》の住みにくいのを忘れてしまふ私との問答。
良人操縱《をつとさうじう》なぞ夢にも知らず、正直まつぱうを眞《まつ》かうにかざす。知つてゐるのは、夫も癖の多い人間で、神ではおはさぬことと、もひとつ、惡魔とも懇意な小説家であるといふこと。
世間の男、一度は可愛いと言つたであらう口の下から、夫婦は戰ふのだと、
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