たん架ではこばれて行くA。

 「空には今日もアドバルンと来やがらア」
 装甲自動車の列。
 行軍する歩兵。
 三分早い
 三分ぐらい
 三分あれば師団の編成が出来る。

 「おい戦友、煙草一本呉れ」
 他の部隊の兵隊と逢うといつも斯う云う。

 彼奴は、煙いのなれとるよ
 養子じゃもの

 「北支の花と散ッた勇士の家庭訪問
 ○○○○氏厳父○左衛門、暗然として語る」
 「よせやい」
 「許婚○○さん、けなげにも語る」
 「馬鹿よさねえか」
 「あの人は……」
 班長○○伍長又語る
 「彼は……」
 此の頃、現地より特電

○壁の戯書
 チャカ、チャカで
  手まね、口まね
   チャン料理

 散兵が歩く
   チャブチャブと水筒の水の音
   伏線として
   水筒を振ッて水を呑む

 石家荘と書いたガス灯割れている。

○軍宣撫班の話
 五色国旗を見せて、これは君たちの国の国旗か、然り
 青天白日旗でワナイカ、違う
 蒋の悪政を云ッて……
 日本の軍隊ヲ恐れてはいけない
 逃げる必要はない
 家に居なさい
 田畑を耕していた人は
 その儘、仕事を続けなさい
 宣撫班が部落民を集め
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