三井物産の大谷氏の話。
 ××乗船ニ遅れた兵。事務長ガ無電ヲ神戸港ノ司令部ニ打ツ
 兵来リテ汽車ニテ○○へ急グ
 航行中ノ運送船ヨリ縄梯子ヲ降シ、モーターボートヨリ兵乗リウツル。
 始末書ヲ書ク
 上海ニテ司令官乗船、事務長ガ頼ム
 司令官、兵ヲ事務長ノ室ヘ呼ブ
 (夜)
 始末書ヲ破ル、兵感激ス。
 司令官、兵ニ破ッタ始末書ヲ渡シ、海ヘ捨テロト云フ
 兵室ヲ出ル、消灯ラッパ聞コエル
 兵戻ッテ来ル
 司令官「遅レタ罪ダ」ト兵ヲ叱ル。
 地ノ果テヲ行ク、参照スベシ

[#「註」略]

×月十五日
 「儂の拳骨は鉄砲の弾丸だ 武士の情けだ」
 モンモンの兵、鉢巻をするあり。
 一二三で鉢巻をして手を叩く遊戯。

[#「註」略]]

 船酔いの男、寝ている。
 「うーん、おい」
 「どうした、確ッかりしろ」
 「儂の背のうを取ッてくれ、中に紙に包ンで梅干がある筈だ」
 「ウメボシ」
 「あるか?」
 「あった」
 「それ、儂のヘソへ張ッて呉れ」
 「船に弱い人は梅干をおヘソに張ッとくと、いくらゆれても平気だッて」
 斯ンな意味の場面アレバヨシ

 太沽沖十浬の処に到着したのが十三日夕方
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