る前に、まづ子供を集めて、キャラメルとかチョコレートを与えている情景
タイアップによろし、
子供、チョコレートを持ッて、娘達の避難場所へ行く、
ヒロインの紹介
娘、チョコレートを喰う
嫌だい、皆くっちゃッて……
と云った芝居が、姉弟の間にあればよろし
宣ブ「わかりましたか、ミンパイ?」
民衆ミンパイ
宣撫班の話を熱心に聴いてミンパイと叫ぶ男、壁に凭れて日なたぼッこし乍ら、スパスパ煙草くゆらし、聴いてるのか、聴いとらんのか、いッこう、頼りない老人憎悪の眼で、壊れた土壁の中から兵隊の方を睨んでいる老婦あり
兵隊と仲よくなっている子供
シロジニアカクの歌を覚えて兵隊の帰る時アトから唄い乍らついて行く
第一分隊より一名、銃前哨
この方向にむかって警戒
交代は三十分、カイサン
城外の田畑を耕ス女子供土の上へ赤児を寝かしとく
匪賊、来襲、女と子供逃げる、赤児泣く
城門、女引返そうとする、止める
女、宣撫班を罵る
通訳に
「おい、あの女、何ンて云っているンだ」
「……………」
宣撫班、城下におどり出る
ヒロイン
赤児を救けて死ぬ
銃眼をのぞく女
見た眼の銃眼の彼方男走って切れる
女次の銃眼へ。(移動)
又見た眼、男行く、又切れる
女、次の銃眼へ。(機関銃の音)
男、出て来ない風景
女、up Cut Back
「オーデがね」
「オーデッて何だ」
「俺の事支那語でオーデッて云うんだ」
「あ、そうか」
「おい、オーデ上等兵」
「オーデ上等兵? 何の事だ、それ」
「お前の事、オーデて云うンだろう」
「違うよ、オーデってのは、俺の事だよ」
「だから、お前は、オーデ上等兵じゃねえか」
「違うったら、オーデってのは、俺という支那語だよ、わからねえ野郎だな」
「何云ってやがんで、わからねえのは手前でえ」
小学校、授業中(first Scene によし)
運動場ニ人影ナシ。(小使いさんが何かしてたい)
唱歌を合唱シテル
ブランコ、かすかにゆれてる
靴箱の情景
廊下
唱歌だんだん大きくなる
二階の教室
歌う子供
黒板
オルガンひく先生
喇叭と万歳の声、かすかに聞こえる
教室の窓と空
子供、キョロキョロ
歌、お留守になり始める
先生、アワテル
外の万歳と喇叭高くなる
子供、中腰・etc・
遂にドッと窓へ寄る
突然出発の命令が出て、ニワトリの毛を半分むいて捨てる。その半分、裸のかしわが、クックッと逃げる情景
支那の老婆が日向ぼっこして、麦わら細工を縫み乍ら兵隊の行軍を見ている。
軍馬の水をやる、ニイ小輩
五色旗を持つ
空、戦火、黒煙が夕立雲の様
荒れ果てた土の上の烏三羽
[#ここで字下げ終わり]
[#改ページ]
手紙
(井上金太郎 宛)
十六日の朝になってもまだいつ上陸するのか分りません。
天気晴朗ですが波はべら棒に高いです。荷物船の底に馬と一緒に居るのでクサクて閉口です。此処まで来た以上早く支那の土を踏ンでせめて小便ぐらいしてやりたいと思います。[#地付き](○○ニテ)
今上陸命令が来ました。(十六日夜)
(日本映画監督協会 宛)
遂に僕も「戦争」に参加しました。そして悪運強くマメで居ます。御安心下さい。
○○の敵中上陸から北支派遣が上海派遣と早変りです。此処は南京豆と南京米とそして南京虫の本場です。
(井上金太郎 宛)
揚子江岸に上陸して南京入城に至る迄の一ヶ月間はまことに、はや、タイヘンなもンでした。幸い悪運強くも無事で居ります。御安心下さい。
煙草が無くなると、よもぎの枯葉をきせるにつめて喫います。なかなかよろしい。何処がよいかと言うとよもぎは道端と云わず山と云わず野と云わず南支至る処にあります。いくら喫っても無くならない。それに煙草は稀に一本喫うと直ぐに又喫いたくなる。こたえられません。処がよもぎは一度喫うと当分は喫う気がしません。真とに経済的に出来上ッとるです。欠点は煙草の味がしない事です。まっこう[#「まっこう」に白丸傍点]臭いです。
酒《チュウ》はチャン酒《チュウ》をやります。チャン酒《チュウ》も内地のチャン料理にある老酒もありますが、所謂チャン酒と云うのが大部分です。此奴、アワモリの様なもんです。最初はくさくて飲めませんでしたが直ぐに平気で呑む様になりました。酒もある時には一石も二石もあって顔や手を洗ったりしますが、無いとなると全々無くなります。重いのでそう持って歩けません。水筒に一杯が精一パいです。砂糖をナメル事をオボエました。
南京へ着いて酒保が一日開かれたので、早速一本二十銭のヨーカン五本買ってペロリと平らげて、まだ食いたい気がします。
朝に駒形のドジョ
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