す。右門も亦後に続く。
34=門前
坊主の案内で門内に入る善男善女達――
35=裏口
小門から覆面の立派な侍や隠居風の町人が、続々と入って行く。敬四郎その中に交って入って行く。右門も亦それに続く。
36=本堂
集まった男女。和尚が立派な風体で悠然と現れます。読経が始まる。
37=裏手
坊主が縁側に控えて居る。側の三宝に貼紙がしてある。
拝観料[#「拝観料」は罫で囲む]
侍達はそれに小判を置いて室へ入る。
敬四郎も紙入れを逆さにして拝観料を払う。右門も亦。
38=本堂
和尚の読経、木魚の音。
39=秘密の廊下
敬四郎其処から階段を上って二階へ上る。
40=二階の密室
十人分程の膳部が並べてある。
通された一同其処へ着座する。酒もあれば魚もある。わけの解らん敬四郎キョロキョロして居ます。覆面の侍の中に例の結城左久馬も居ます。
41=本堂
読経を終った和尚が一同に、
T「では御婦人方は室へ退って御待ち下さい」
と言って、
T「貴女がたの心に想う殿方がやがて」
T「貴女がたの眼の前に現れておいでになります」
と小坊主に案内を命ず。で、お類やお兼や他に女三人立ち上って坊主の案内で去ろうとする。処が、おふみは其の方へ行こうとせず、ふいと立上るや、
T「妾帰ります」
と来た。和尚、
「何故帰りなさる?」
おふみ、
T「だって妾の心に想ってる人は此処に居ないんですもの」
と言った。和尚が
T「此処には居なくとも御仏の御力を借りて拙僧が」
T「必ッとその御方を貴女の眼の前へ御連れします」
おふみ、
「馬鹿々々しい」
T「お生憎さま、妾の想ってる御方ァね、和尚さん」
T「仏さまが鯱立ちして力んだって、こんなケチなお寺へは来っこないの」
と云い捨てて、廊下へ出ようとする。和尚とめて、
T「貴女は奇蹟を信じませんか」
傍からお類が、
T「嘘か本当か行って見なければ判らないわ」
と云う。
おふみちゃんも仕方が無いから他の女達と一緒に室に行く。
42=密室
右門が前の御膳をソッと動かすと、床に四五寸程の穴があけてある。
43=下はおふみの室
おふみが坊主に案内されて入って来た。
勿論四畳半の感じです。傍にある鏡に右門の顔が映る。
驚いておふみ上を仰ぐ。
右門小柄を抜いて投げてやる。
おふみその小柄を握りしめた。
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