国民は自由である。あるいは種々の法律があって、生命財産の安全を保っているけれど、教育の遣り方を見ると実に情ない。先ず子供が生れる、脊に負われる、足を縛られる、血の循環が悪くなる、あるいは首が曲る。太陽の光線が直接に頭を射て脳充血が起る、またその光線が眼の中に入って眼を痛める。あるいは乳を無暗に哺《ふく》ませ過ぎて胃腸病を多くする。日本に眼病や胃腸病の多いのは幼児の養育法を過《あやま》っているからである。また足を縛るから足の発育が出来ないで、皆短い足になってしまう。生れたときからそういう養育法をやり、そうして小学校へ入学してからでも、何か面白いことをいって笑う間に学問をさせるとか、あるいは筋肉を動かして、身体の発達を促がせば宜いが、そういうことはない。もっとも近来は小学校の教授法も大分に改良が出来たけれど、とにかく子供の心中には、学問は苦しいものだ、辛いものだという観念が注入されている。その筆法で大学まで来るが、その間子供が何か書くときでも、面白いと思って書きはしない、いやだいやだと思って書いている。即ち智識を得るのはなるほど蛍雪の功だと思うようになるはずだ。
もし学校に於ける教育法の
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