我が教育の欠陥
新渡戸稲造

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)非《あら》ず

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ]〔一九〇七年八月一五日『随想録』〕
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 我政府が教育上に於ける施設の多大なることは否むべからず。明治年代の教育法は、維新前の教育法を継承せるものに非《あら》ずして、全く新軌道を取れるものなれば、その事業の宏大なることもまた否むべからず。この新教育制度の成功の量の大なることも、また否むべからず。されどああその成功や過ぎたり矣。今日の教育たるや、吾人をして器械たらしめ、吾人よりして厳正なる品性、正義を愛するの念を奪いぬ。一言にしていわば、これぞ我祖先が以て教育の最高目的となしたる、品格ちょうものを、吾人より奪い去りたるものなる。智識の勝利、論理の軽業、あやつり、哲学の煩瑣繊微、科学の無限なる穿究、これらはただ吾人を変えて、思考する器械たらしむるに過ぎざるものなりとせば、畢竟《ひっきょう》何の益かある。フレーベル及びヘルベルトの教育法も、もしこれらが吾人の目にある眼鏡に過ぎずして、活《い》ける器関たら
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