するものはなくて、唯自分で或る哲理的の宇宙観乃至人生観説を持して、余義なく満足しているのである。私の意見では、何事も事実に説明されたものでなくては信ずるに足らぬ、而して理学はまずその側のものであるけれども、これもまだ絶対的に宇宙の事物を研究せられてはいない。ただ幾分かそれが出来ているから、それを基礎として、知り居るだけの事を知って、その立場立場で比較的確かなというものに満足しているのである。そこで今日よりも明日、更に知る点が出来たなら、またそれに移って行く、要するに事実と共に私の智識は進んで行くのであって、その比較的確かなものを信じて、これに満足をする外はないのだ。この事を話せば際限もないから、ここらで止めて置くが、そんな考えがその頃から出来て、遂に今日に至っても変らないのである。
十八年の末に森有礼《もりありのり》氏が文部大臣となって兼て抱いていた学事の改革を実行せらるる事になった。この人は凡ての法令の案文は自分で書く風なのであったが、それを修正して発表するには辻次官からの命でいつも私が筆を執った。私はこれ以前一等属より進んで准奏任御用係というのでいたが、この際更に文部権少書記官に
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