軍隊さえ甲冑や槍や火縄筒を用いていたのであるから、この奨励の下に両家へも入門する者が増加した。私も軍法なら[#「なら」は底本では「ならぬ」]撃剣とは違い、漢学の応用も出来ようから、一つこれで中段を得たいと思い、既に学友の籾山は入門していたから、それにも問合せなお由井を勧めて二人で野沢へ入門した。出てみると、その先輩達が軍法に属する書物を一応読んで聞かせて、それを私どもにも読ませる。総てが仮名文で、漢籍を読む力では実にばかばかしいものであったが中段が得たいばかりに、腹の中では笑いながらもその教えを受けた。またある時は出陣式とか鎧の着初式とかいうのを古式に依って行い、門人の中の或る子供が殿様や若殿様となり、その他も種々なる役人となって、各々小具足を着けて真似事などをした。場所は藩にも奨励の際とて三の丸大書院を明渡してそこでさせた。私も小具足でその席に列し、命令通りの服役をしたことである。けれども漢学の力を応用するような機会もなく、中段は一向に貰えない。
もうその頃は同年輩の者は得意で御雇を勤め、あるいは京阪に旅行するものもあった。それに引替え私は寄宿舎の中にくすぶっていて、その中でこそ気
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