氷島
萩原朔太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)幻像《まぼろし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)百|度《たび》も

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)輪※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]を
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  自序

 近代の抒情詩、概ね皆感覺に偏重し、イマヂズムに走り、或は理智の意匠的構成に耽つて、詩的情熱の單一な原質的表現を忘れて居る。却つてこの種の詩は、今日の批判で素朴的なものに考へられ、詩の原始形態の部に範疇づけられて居る。しかしながら思ふに、多彩の極致は單色であり、複雜の極致は素朴であり、そしてあらゆる進化した技巧の極致は、無技巧の自然的單一に歸するのである。藝術としての詩が、すべての歴史的發展の最後に於て、究極するところのイデアは、所詮ポエヂイの最も單純なる原質的實體、即ち詩的情熱の素朴純粹なる詠嘆に存するのである。(この意味に於て、著者は日本の和歌や俳句を、近代詩のイデアする未來的形態だと考へて居る。)
 かうした
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