散文詩集『田舎の時計 他十二篇』
萩原朔太郎
[収録作品]
海/田舎の時計/坂/大井町/郵便局/墓/自殺の恐ろしさ/詩人の死ぬや悲し/
群集の中に居て/虚無の歌/虫/貸家札/この手に限るよ
[表記について]
●本文中、底本のルビは「《ルビ》」の形式で処理した。ルビのない漢字(語句)のあとにルビのある漢字(語句)が続く場合は、区切り線「|」を入れて、漢字(語句)とルビとの対応関係がわかるようにした。
●底本は本文は旧かな遣い、ルビは新かな遣いで編集されており、このテキストも底本に準じた。
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海
海を越えて、人人は向うに「ある」ことを信じてゐる。島が、陸が、新世界が。しかしながら海は、一の広茫《こうぼう》とした眺《なが》めにすぎない。無限に、つかみどころがなく、単調で飽きつぽい景色を見る。
海の印象から、人人は早い疲労を感じてしまふ。浪《なみ》が引き、また寄せてくる反復から、人生の退屈な日課を思ひ出す。そして日向《ひなた》の砂丘に寝ころびながら、海
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