さうとした。全集や綜合詩集は例外として、すべて單一な標題を掲げた詩集は、その標題が示す一つの詩境を、力強く一點に向つて集中させ、そこに詩集の統一された印象を構成させねばならないこと、あだかも一卷の小説に於ける構成と同じである。一册の標題された詩集の中に、そのテーマやスタイルを異にしてゐる種種雜多の詩が書かれてるのは、藝術品としての統一がなく、内容上の美的裝幀を失格してゐる。そして「青猫」の初版本が、この點でまた不備であつた。例へば「軍隊」「僕等の親分」などのやうに詩の主想とスタイルとを異にして居る別種の者が混入して居り、他との調和美を破つて居た。再版の機會に於て、これもまた改訂編輯せねばならなかつた。
次の第二の理由は、初版本の裝幀、特に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]繪のことに關係して居る。私の始めのプランとしては、本書に用ゐた物と同じやうな木版畫を、初版本にも※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]繪とするつもりであつた。然るに出版書店の方で時日を迫り、版畫職工との煩瑣な交渉を嫌つた爲、止むを得ず有り合せの繪
前へ
次へ
全55ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
萩原 朔太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング