第4水準2−12−11]と轉生
地獄の鬼がまはす車のやうに
冬の日はごろごろとさびしくまはつて
輪※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《りんね》の小鳥は砂原のかげに死んでしまつた。
ああ こんな陰鬱な季節がつづくあひだ
私は幻の駱駝にのつて
ふらふらとかなしげな旅行にでようとする。
どこにこんな荒寥の地方があるのだらう
年をとつた乞食の群は
いくたりとなく隊列のあとをすぎさつてゆき
禿鷹の屍肉にむらがるやうに
きたない小蟲が燒地《やけち》の穢土《ゑど》にむらがつてゐる。
なんといふいたましい風物だらう
どこにもくびのながい花が咲いて
それがゆらゆらと動いてゐるのだ
考へることもない かうして暮れ方《がた》がちかづくのだらう
戀や孤獨やの一生から
はりあひのない心像も消えてしまつて ほのかに幽靈のやうに見えるばかりだ。
どこを風見の鷄《とり》が見てゐるのか
冬の日のごろごろと※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]る瘠地の丘で もろこしの葉が吹かれてゐる。
さびしい來歴
むくむくと肥えふとつて
白くくびれてゐるふしぎな球形の幻像よ
それは耳もない 顏もない つるつるとし
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