に驅り立てられてる。そのくせ彼等は、絶えずごろごろ[#「ごろごろ」に傍点]と怠けて居り、塵の積つた原稿紙を机上にして、一生の大半を無爲に寢そべつてゐるのである。しかもその心の中では、不斷に時計の秒針を眺めながら、できない仕事への焦心を續けてゐる。
橋 日本の橋は、もつともリリカルの夢を表象してゐる。あはれな、たよりのない、木造の侘しい橋は、現實の娑婆世界から、彌陀の淨土へ行くための、時間の過渡期的經過を表象し、水を距てて空間の上に架けられてる。それ故に河の向うは彼岸(靈界)であり、河のこつちは此岸(現實界)である。
詩人の死ぬや悲し 現實的な世俗の仕事は、すべて皆「能率」であり、實質の功利的價値によつて計算される。だが文學と藝術とは、本質的に能率の仕事ではない。それは功利上の目的性をもたないところの、眞や美の價値によつて批判される。故に藝術の仕事には、永久に「終局」といふものがないのである。そして詩人は、彼の魂の祕密を書き盡した日に、いよいよ益益寂しくなり、いよいよ深く生の空虚を感ずるのである。著作! 名聲! そんなものの勳章が、彼等にとつて何にならう。
主よ。休息をあ
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