cquaintance be forgot, and days of auld lang syne!
木偶芝居
あの怪人物が手にもつ一つの巨大な棒を見よ。それが高くふりあげられ、力を込めてまつすぐに打ちおろす時、あれらの家屋は破壞され、めちやくちや[#「めちやくちや」に傍点]になり、警官の如きもの、隊長の如きもの、ビア樽の如きもの、横倒しにされ、その遠心力でもつて舞臺の圈外へ吹つとばされる。そこで青白い音樂のリズムが起り、すばらしい巨きな月が舞臺の空へ昇つてくる。ぐんぐんぐんぐんと上の方へ、とめどもなく高く昇る。おおその時、その時、その破壞された家の下から、どんな一つの物悲しい言葉が聽えてくるか――一つの怪奇な木偶《にんぎやう》の靈魂は、かれの細長い舌を以てすら[#「舌を以てすら」に傍点◎]「幽冥に於ける思想」を語るであらう。喇叭を吹くやうなバスの調子で。
極光地方から
海豹《あざらし》のやうに、極光の見える氷の上で、ぼんやりと「自分を忘れて」坐つてゐたい。そこに時劫がすぎ去つて行く。晝夜のない極光地方の、いつも暮れ方のやうな光線が、鈍く悲しげに幽滅するところ。ああ
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