うまでもなく芸術家は、すべてハムレットに属している。芸術家はだれでも、決してドン・キホーテたり得ない、運命の決定された素質を持っている。或は多少、それに近いものがあったにしても、所詮《しょせん》アポロ的デオニソスであり、ハムレット型ドン・キホーテたるにすぎない。即ち彼の大胆な行為の影で、智慧の臆病が眼をつぶっている。(セクスピア)
 故に真に「天分ある詩人」とは、この主観者と客観者、生活者と芸術家とが、一の人格に於て完全に結合され、10[#「10」は縦中横]に対する10[#「10」は縦中横]の比例で、平衡を得たものでなければならない。もし一方の者が他に優《まさ》れば、彼は所謂「詩を作らない詩人」となり、もしくは逆に、芸術的才能のみあって詩的精神の欠乏している霊魂なき「詩を持たない詩人」になる。こうした不幸の例について、吾人は実に多くのものを見聞している。たとえば我が王朝の歌人|在原業平《ありわらのなりひら》は、日本無比な情熱的な恋愛詩人で、かつ藤原氏の専横に鬱憤《うっぷん》しつつ、常に燃ゆる反感を抱《いだ》いていた志士であり、あたかも独逸《ドイツ》の詩人ハイネに比すべき人であったが、彼
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