の異常なる性慾の発作と、死に面接する絶えまなき恐怖であつた。
就中、その性慾は、ああした病気に特有な一種の恐ろしい熱病的執拗をもつて、絶えず此の不幸な青年を苦しめたものである。恭吉氏の芸術に接した人は、そのありとあらゆる線が、無気味にも悉く「性慾の嘆き」を語つて居る事に気がつくであらう。それらの異常なる絵画は、見る人にとつては真に戦慄すべきものである。
「押へても押へても押へきれない性慾の発作」それはむざむざと彼の若い生命を喰ひつめた悪魔の手であつた。しかも身動きも出来ないやうな重病人にとつて、かうした性慾の発作が何にならうぞ。彼の芸術では、凡ての線が此の「対象の得られない性慾」の悲しみを訴へて居る。そこには気味の悪いほど深酷な音楽と祈祷とがある。
襲ひくる性慾の発作のまへに、彼はいつも瞳を閉ぢて低く唄つた。
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こころよ こころよ しづまれ しのびて しのびて しのべよ
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何といふ善良な、至純な心根をもつた人であらう。たれかこのいぢらしい感傷の声をきいて涙を流さずに居られよう。
一方、かうした肉体の苦悩に呪は
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