だ探偵のくらい顔と、
さびしい女の髪の毛とがふるへて居る。


蛙の死

蛙が殺された、
子供がまるくなつて手をあげた、
みんないつしよに、
かわゆらしい、
血だらけの手をあげた、
月が出た、
丘の上に人が立つてゐる。
帽子の下に顔がある。
[#地付き]幼年思慕篇


くさつた蛤[#「くさつた蛤」は太字]
なやましき春夜の感覚とその疾患


内部に居る人が畸形な病人に見える理由

わたしは窓かけのれいす[#「れいす」に傍点]のかげに立つて居ります、
それがわたくしの顔をうすぼんやりと見せる理由です。
わたしは手に遠めがねをもつて居ります、
それでわたくしは、ずつと遠いところを見て居ります、
につける製の犬だの羊だの、
あたまのはげた子供たちの歩いてゐる林をみて居ります、
それらがわたくしの瞳《め》を、いくらか[#「いくらか」に傍点]かすんでみせる理由です。
わたくしはけさきやべつ[#「きやべつ」に傍点]の皿を喰べすぎました、
そのうへこの窓硝子は非常に粗製です、
それがわたくしの顔をこんなに甚だしく歪んで見せる理由です。
じつさいのところを言へば、
わたくしは健康すぎるぐらゐなものです
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