けとによつて、何人も意識的に人相を變へ、惡しき手相を善き手相にし、自由に運命を支配し得ることを辯解する。かくも辻ツマの合はない非論理を、彼等は平然として言ふのである。「宿命のプログラムは、星の運行と共に決定されてる。だが人々は、それを預め自覺することによつて、來るべき災難を未然に防ぎ、大厄を小厄にし、幸運のチャンスを捉へ、すべてに於て將來を賢明に用意し得る」と。それからして演繹し、彼等一流の運命開拓法を説くのである。「君の今度の旅行は、東南に向つて出發なさい。必ず幸運が待つて居り、一擧にして大金が手に這入る。君の過去の不幸は、丑寅の方位に當る南天の樹の祟りであつた。よろしく速かに伐りなさい。必ず運命が一新する」等々。げに易者の哲理ほど、都合よく詭辯されたものはない。



底本:「萩原朔太郎全集 第五卷」筑摩書房
   1976(昭和51)年1月25日初版1刷発行
   1987(昭和62)年2月10日増訂版1刷発行
入力:桑田康正
校正:小林繁雄
2005年1月20日作成
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