田地の働が六百圓から四百圓若くは二百圓する、去年と雖も二百圓の働を以て六百圓の働をするのでございますから、堤防を堅牢にし水ハケを付けて灌漑の道を付ければ關八州の中では谷中村程善い村と云ふものは先づ二ツとなからうと私は信ずる、周圍には渡良瀬川思川と云ふのがあつて汽船が廻つて村の中から汽船に乘つて東京へ來る、汽船の乘場が四ヶ所ある、マン圓で千町許りが眞ツ平で何でも出來ぬものはない、さう云ふ結構な所が東京を去ること僅か二十里ない所にあると云ふことでございますから、此土地と云ふものは手の入れ次第で非常に善い村になる、彼の稻取村も元とから善い村でないが廢れものを收めて利益を收め世話が屆いたからで、然るに谷中村は今日打壞しに掛つて居るから田地の價もない人間も價のない如く禽獸に等しい扱を受けて居る、虐待侮辱惡い文字を蒙らぬものは一ツもない、政府の方から見ましたならば何と見へるか知らんが、侮辱、虐待、嘲弄、瞞着、總てのことをやられて居る、色々な目に遭つて居る、斯う云ふ目に遭つては人間も價値がない。

     △胸が張り裂ける計り[#「胸が張り裂ける計り」に丸傍点]

 之は順用して天然の資力を十分發
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