る者は木を賣る、それが皆運動屋で、鷄も賣れと云ふ、鷄も必要がありますまいから御賣りなさい、船も此處に居なければ要らぬから御賣りなさいと云ふ、種々なる商人を數百人入れてさうして人民を狂亂させて仕舞つた、それから村の中へ七人と云ふ惡黨を入れて是等に非常な流言を放たして、村中を驅け歩いて、人民を騷がして歩く、此商人が色々騷がして歩く爲に人民は發狂した如くなつて居ります、さうなくても三四年食物がなく借金をして居る、金主の方は金貸の方へ内通をして居つて金貸が非常に督促をする、三百代言を何百人と入れてサア寄越せと云ふ、田地を抵當にしても取る人がない、賣らうと云つても買手がない、金融の道を塞ぎ食べるものを奪ひ、堤防は此村には永世築かないと云ふ亂暴なことを書いたものまで――公文書まで發して人民を迷はしたのでがすから、人民が發狂するのも無理はない、殆ど狂人の如くなつて村を逃出す、逃出すに付いて何程でも錢が欲しいと云ふ所へ僅の錢を與へるに過ぎぬ、之が丁度江戸城の亡びます時に私が江戸に居りましたが、旗本なる者が江戸城を逃出して一は比叡山に立籠り、一方は流山邊に逃げて今市日光に戰つて會津へ落ちて往つて死んだ、
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