を合せてやつた、細かな御話をしますとお話が先にいきませぬから、一萬千三百町の地面の立派な材木と其中三千町以上の地面を附けて其代價が一萬千百圓で、此兩人に拂下げになつて居ると云ふことを御記憶を願ふ、一萬千三百町のものを一萬千百圓で拂下げた、夫で其木を伐つた、其木を伐ると云ふことに付いても大層御話がございますが夫は木を伐つたと一口に云ふ、それから山の木を伐れば河が荒れると云ふことは定まつて居る、河が荒れゝば又其河に費用が掛ると云ふことは定まつて居る、河を渫ふ、色々費用が掛ると云ふことは皆樣御承知のこと、そこで此河は群馬縣、埼玉縣、茨城縣に及んで居りますが、先づ栃木縣一縣の御話で後とは御推測を願ふ。

     △農商務大臣殿の屋敷迄[#「農商務大臣殿の屋敷迄」に丸傍点]

 栃木縣一縣で地方税が負擔に堪へなくなつた、河が荒れて負擔に堪へなくなつて百八萬圓と云ふ借金をして、土木費堤防費抔が河が荒れて堪らぬで百八萬圓拂ふて河を修理して居る、栃木縣一縣下で官林を拂下げてタツタ一萬一千百圓の金を國庫に收入した、さうして百八萬圓借財をして堤防を造つて居ります、之を一寸覺へて置いて頂きたい、之は栃木縣一縣下で群馬縣も多少此例がある、埼玉縣にも茨城縣にも此例があると御承知を願つて置きたい、それで政府は國會議員の忠告或は社會主義者の忠告、種々なるものが幾らか耳に入つて、大に悔る所があつて、此山へ木を植へると云ふことを始めた、山へ木を植へると云ふと百年經てば河が荒れなくなる、だから兎に角山へ木を植へると云ふことは惡いことではない、しなければならぬ仕事である、之は一體徳川時代にも斯う云ふことがあつた、矢張百八年目になつて居る、古川市兵衞と安生に拂下げたのは百八年目になつて居る、矢張木を植へることをやつた、木を植へると云ふことが去る三十年の年に九萬六千本を植へた、九千六百圓で拂下げて――九萬六千本の臼のやうな木を九千六百圓で拂下げて、其跡へ斯んな小指のような苗木を植へるのが九萬六千圓、九萬六千圓で何程の部分に植つたかと云ふと七千六百町の中百町も植はらない、到底七千六百町の中へ植へるのには九萬や十萬の金では仕樣がないと云ふので抛棄して置いたが、餘程の奮發と見へて六十八萬圓と云ふ代價の原案が出て帝國議會で植へることになりました、こゝ等が一寸御記憶を願ひたい、惡いことでない、善い方のことで、前の惡いことを悔いてやることだから、一萬千百圓の所へ九萬六千圓の木を植へる、後とが六十八萬圓の木を植へる、それを十年繼續して植へると云ふ斯う云ふ次第で、利根川も渡良瀬川以下大分荒れました、二十九年には東京府へ咄嵯に鑛毒水が這入つて向島の農商務大臣殿の屋敷迄鑛毒水が這入つた、斯う云ふので驚いて、さうして群馬、埼玉、茨城、栃木等の知事が集つて政府に河渫をすること、利根川を低くすること、水のコケの宜くなることを河身改良として、國會に要求して、政府から原案を出して貰つて國會議員も之を贊成して呉れと云ふ運動を群馬、埼玉、茨城、栃木の知事が盡力して、さうして國會を通過して東京府へ鑛毒水の這入らぬやうに土手を太くしたり、河を渫へ廣げたりする普請金が六百五十萬圓と云ふ、之は東京府へ鑛毒水が這入ると由々しき問題が起る、足尾銅山鑛毒田地が出來るから、それは大變だから豫め東京府へ鑛毒水が這入らぬが宜いと云ふので六百五十萬圓と云ふ金が出たのである、それは年々五十萬圓宛の金で銚子の口から河身改良をして居ります、栗橋と云ふ東北線を渡る處迄參るのが明治四十二年に彼處に達する、さうすると渡良瀬川の水のコケも宜くなり水害も少なくなる、之は直接鑛毒問題のやうではないが、上手の渡良瀬川の近所の人民が騷ぐ分はどうか、時たま兇徒嘯集と云ふ名でも付けて牢へ入れゝば濟むが東京府の人民は色々學者が居つて八釜敷くてならぬから、之は議論が移つて來てはいけないと云ふ所の豫防法が御話にはなかつた、御話すると皆氣が付くから御話には河身改良費と云ふのですが、之が六百五十萬兩、斯樣な譯で此僅か一萬千百圓の國庫收入があつて官林の拂下、之に對する亂伐、其町歩が一萬千三百町、之は表反別でございますけれ共官林のことは中々實測調べは何萬町になつて居るか分らぬ廣い場所である、是で一萬一千百圓の國庫收入の山に或は木を植へる、或は地方縣令で借金をして栃木縣一縣下で百八萬圓借金をして、東京府の豫防の爲に六百五十萬圓支出する、此金額はこゝで八百四十三萬六千圓となる、八百四十三萬六千圓、此外まだ埼玉縣、群馬縣、茨城縣等の堤防費の多く殖へたと云ふことは此外になりますから殆ど千萬圓多く餘分の金が支出になると云ふことで、さうしなければ此一萬千百圓で拂下げた爲に山が赤裸になつて山口が崩れる、洪水が出て來る、河を荒し人家を荒し人を殺すことを防ぐ手段として、此處に申
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