業停止の請願書が大分出るさうだから古河市兵衞に掛合へば必ず金が取れる、金を取るのは此處だと言ふて騷ぎ[#「騷ぎ」は底本では「騷き」]立て、郡吏の先立で、古河市兵衞から一萬圓内外の金を取つて被害人民を胡麻化そうとしたが、然う馬鹿にされる人民許りでもございませぬから、昨今反對の大騷があると云ふ話である。兎に角郡吏と云ふ者の遣り方が此の通りだ。内務大臣と云ふものは是に就て、何故己の本領を固めて農商務大臣に御掛合は無いでございますか。甚しきは此の廿七年の十一月のことでございます。十一月は未だ日清戰爭中、海城邊の戰爭の時分で、兵隊は寒い所で凍へて死ぬ、兵糧衣服は不十分と云ふことを訴へて居る折柄、此の鑛毒被害地からも壯丁が繰出して戰場へ出て居る、此の壯丁の居ない時を附け込んで老若男女を脅かし騙して印を取つたと云ふことは、如何に金が欲しくてすると云ふても、苟も役人と云ふ肩書を持つて居る奴が、古河市兵衞の奴隸になるとは怪しからぬことで、此の人間が今日に至て未だ郡吏だとか何だとか云ふことをして居ると云ふに至ては、日本政府無し――政府があるならば斯樣な奴は嚴重なる御處分があつて宜しかろうと思ふ。それで一圓
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