》き寄《よ》せてじつとばかり眺《なが》めしが。妾《わら(は)》と思《おも》つて下《くだ》さいと云《い》ひもあへずほろ/\とこぼす涙《なみだ》其《その》まゝ枕《まくら》に俯伏《うつぶ》しぬ。千代《ちい》ちやんひどく不快《わるく》でもなつたのかい福《ふく》や薬《くすり》を飲《の》まして呉《く》れないか何《ど》うした大変《たいへん》顔色《かほいろ》がわろくなつて来《き》たおばさん鳥渡《ちよつと》と良之助《りやうのすけ》が声《こゑ》に驚《おど》かされて次《つぎ》の間《ま》に祈念《きねん》をこらせし母《はゝ》も水初穂取《みづはつほと》りに流《なが》し元《もと》へ立《た》ちしお福《ふく》も狼狽敷《あはたゞしく》枕元《まくらもと》にあつまればお千代《ちよ》閉《と》ぢたる目《め》を開《ひ》らき。良《りやう》さんは。良《りやう》さんはお前《まへ》の枕元《まくらもと》にそら右《みぎ》の方《はう》においでなさるよ。阿母《おつか》さん良《りやう》さんにお帰《か》へりを願《ねが》つて下《くだ》さい。何故《なぜ》ですか僕《ぼく》が居《ゐ》ては不都合《ふつがふ》ですかヱ居《ゐ》てもわるひことはあるまい。福《ふく》や
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