将来の日本

田口卯吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)肥後《ひご》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)書中雅意|掬《きく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ]
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 徳富猪一郎君は肥後《ひご》熊本の人なり。さきに政党の諸道に勃興するや、君、東都にありて、名士の間を往来す。一日余の廬《りょ》を過ぎ、大いに時事を論じ、痛歎して去る。当時余ひそかに君の気象を喜ぶ。しかるにいまだその文筆あるを覚《さと》らざるなり。
 すでに西に帰り、信書しばしば至る。書中雅意|掬《きく》すべし。往時弁論|桿闔《かんこう》の人に似ざるなり。去歳の春、始めて一書を著わし、題して『十九世紀の青年及び教育』という。これを朋友子弟に頒《わか》つ。主意は泰西《たいせい》の理学とシナの道徳と並び行なうべからざるの理を述ぶるにあり。文辞活動。比喩《ひゆ》艶絶。これを一読するに、温乎《おんこ》として春風のごとく、これを再読するに、凜乎《りんこ》として秋霜のごとし。ここにおいて、余初めて君また文壇の人たるを知る。
 今この夏
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