屋に売れずツンドクの洪水を成して居るではないか、これが完成に至れば、泥舟に移して大海へ押し流すより外はあるまい、古本洪水というような馬鹿気たことは、ノア前後の歴史にもない珍怪事である、此珍怪事を一年半前に予言してそれが的中した著者の天眼は、大本教の神様よりもエライではないか
『縁日安売全集』 昨今は、重い物を態々持出して露店へ並べても、アマリ売れないから多くは出ていないが、安売りされて居るのは事実で、高いのが一冊六十銭安いのは一冊三十銭位である、いずれ近き将来には五六冊積み重ねて「一山十銭」の札が付くであろう、一円の予約本が後になれば古本としても一円四五十銭に売れるなど言囃して居た当時に「縁日安売」を予言した人は著者ばかりであった、どうしても神様格の御方でがなあろう
『予想裏切全集』 これからは出版屋に就ての事である、予約金が予算通りにはいらなかった事、予約者の破約が続出して最初の四分一位に減じた事、取次店から思うように金を払込まない事、是等の予想裏切がモトで、振出手形の切り変えを繰返さねばならず、高利貸に責立てられて在庫品を捨売りせねばならず、広告料の不払で家屋を抵当に入れねばならず
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