の全盛期にも、此方は流行カブレの仲間には入らないぞ、といったような態度で、従来の雑誌五六種を発行するのみで居た某区内の某社までが、近頃全集物の一円本を二種出すに至った、それは雑誌のヤシ的誇張広告を諸新聞紙上に出しても、五割以上の返本があるのは、其内容の空疎に呆れて顧客が漸減するものとは気付かず、是も全く流行円本の影響だとばかり見て、遅れ馳せにクダラヌ全集物を出す事になったのであろうが、出版界の破廉恥漢、汝に良心ありやと、曾て同業者会で罵られた事もあるノロマ[#「ノロマ」の「ノ」と「マ」に圏点]ならぬ狸爺、例の「果然満天下の熱狂的歓迎」とか「予約者殺到期日切迫」などと諸新聞紙上に、誇大文句を並べるであろうが、イクラまで愚物を釣り寄せ得るか、皮算用の十分の一にも達しないことを予言する
昨今の諸新聞を見ると、彼は果して例の誇大文句を並べた大広告を出して居る、其中で最も小癪に障る一二の文句「報国の赤誠より出たる献身的大努力の結晶」だとサー、笑わせるではないか、破廉恥漢の赤誠とは赤い舌を出す「赤舌」の間違いだろう「面白い全集だ、子孫に伝えたい不朽の名著だ」とは「旧版丸抜きのクダラヌ低級の全集だ
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