であった、結局甲は雛鳥の如くヒヨ/\の悲鳴を挙げ、乙は二十八万円とやらの負債で福が永く続かぬどころか、家屋も信用もゼロに成り、昨今は虫のイキで居るが、株を牛込の某社に取られた『気どりや全集』がウマクあたれば、其割前を貰えるという事だけが、死水《しにみず》同様、末期《まつご》の望みであるそうな、アワレと云うも却々《なかなか》にオロカなりける次第なりけり、近頃の不経済学全集も亦其轍を同うするに到れば、皆様ヤンヤと御喝采を願いますぞよ、へへへへ

読者の横暴
往年出版書肆の横暴を叫んだ時もあったが、近年は小売書店が横暴を極めて居るそうである、がモ一つ転じて読者の横暴時代に化さねばならぬと法学博士某が云った、読者の横暴とは如何の事か知らない、書店で立ち読みして買わないのは横暴でなく卑劣の横着であるが、円本出版屋の方では、横暴読者既に在り、予約を無視して中途で破約するのは横暴であると云うだろう、此種の横暴には我輩大左袒大賛成である

今に新円本出版の続出するのは何故か
円本の全盛期は昨年の夏秋頃で、今は最初の四分の一位に減じて居ると云うに、マダ破産しない者が多くあり、尚又新たに計画した新出版の全
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