べるに過ぎない、古来の俚諺に「盗人《ぬすと》にも三分の理がある」という、円本の流行にも何等かの利益はあろうが、それは盗人の道理に同じ事と見る、本書の著者は、礼讃の正反対たる撃退目的の痛棒をクラワシてやるのである、論難の無遠慮にして切実、観察の徹底的にして明敏、加之《しかも》、簡潔の警句、犀利の妙文を以て自ら誇る著者が、五日間、鬼の住むという東北の山中にこもり、腕にヨリを掛て書きノメシた此総マクリ、毀《そし》る者は毀《そし》れ、誉める者は誉めろ、著者の胸中はタダ光風霽月

害毒の十六ヶ条
我出版界のため、我読書界のため、延《ひ》いては我学界のため、我経済界のため、黙過すべからざる重大の社会問題として、一円本流行の害毒を列挙すること左の如しである
要は破壊にあらずして建設、悪物退治にありて正業保護、罵らんとして罵るにあらず、傷つけんとして傷つくるにあらず、正論硬議、熱血の迸《ほとばし》り、熱涙の滴《したた》り、秦皇ならねど、円本を火にし、出版屋を坑にせんずの公憤より出た救世の叫びである
但し一円本とは一冊一円の全集物、及び一円以下のヤクザ本全集の事であって、一冊二円、三円、五円の全集物を云
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