産の「数でコナス」という通則で、一冊八銭若しくは十二三銭で請負う事になったのである、それがため従来一時間に五十部仕上げて居たものが、百部も二百部も仕上げねば勘定に合わぬ事になったので、巧遅よりも拙速という事に変じたのである、拙速……粗雑でも早いがよい……これが製本技術の低下で、従来の一千部乃至二三千部位の製本料は旧価のままでありながら、拙速に手馴れた職工共はヤハリ廉価な円本同様の仕上げをするのである、それで少数の単行本出版屋は、従前通りの高価を払って粗雑な製本を押付けられる事になった、これも資本主義の円本が普通出版屋に及ぼした害毒の一つに算えねばならぬ事であろう

通信機関の大妨害
従来広告依頼者の多い大新聞社は、威張ッて依頼者の要求を容れない事が多かったのであるが、円本流行で一頁又は二頁続きの大広告を出す事になったので、大新聞社が一層威張るように成った、従前は依頼した当日より五六日目若しくは十日以内に掲出して居たが、昨春以来はそれが十日も二十日も遅れ(死亡広告だけは例外)場所指定などは、一ヶ月前に申込んで予約せねばならぬのである、それを若し何日迄に是非掲出して下さいと頼めば、ソンナに
前へ 次へ
全46ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮武 外骨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング