を混同した例も多少あって、その音が近似していたことを思わせるが、江戸時代に入ると早くもこの両者の別がなくなって、同音に帰したのである。開音のo[#「o」の上に「v」]が開口の度を減じてo[#「o」の上に「−」]と同音になったのである(かようにして、江戸初期から、開合の仮名遣が問題となるにいたった)。この両種の音は、現代の新潟県の或る地方の方言には残っている。
 (三) ハ行音は、第二期の末までは、ファフィフゥフェフォのようにFではじまる音であったが、江戸時代に入って次第に変化を生じ、唇の合せ方が段々と弱くなり、遂には全く唇を動かさずして、これと類似した喉音hをもってこれに代えるようになった。京都方言では享保・宝暦頃には大体h音になっていたようであるが、元禄またはそれ以前に既にh音であったのではないかと思われるふしもある。しかし、第二期におけるごときハ行音は、遠僻の地の方言には今日でもまだ存している。
 (四) 「敬《けい》」「帝《てい》」「命《めい》」のようにエ段音の次にイ音が来たものは、文字通りケイテイメイと発音していたのであるが、江戸後半の京都方言では、エ段の母音eとiとが合体して
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