たはイの音になり(「上《ジャウ》」「東《トウ》」「康《カウ》」などの語尾ウ、「平《ヘイ》」「青《セイ》」などの語尾イは、もとngである)、入声の語尾のpはフ、kはクまたはキになり、tは呉音ではチになったが、漢音ではtの発音を保存したようである(仮名ではツと書かれているが実際はtと発音したらしい)。そうして平安朝以後、漢語が次第に多く国語中に用いられたので、以上のような漢語の発音が国語の中に入り、ために、語尾における「ん」音(nと発音した。しかし後には多少変化したかも知れない)や、語尾における促音ともいうべき入声のt音が国語の音に加わるにいたった。
 (八) 漢語には、国語にないキャキュキョのごとき拗音が、ア行ヤ行ワ行以外の五十音の各行(清濁とも)にわたってあり、クヮ(kwa)クヰ[#「ヰ」は小文字](kwi「帰」「貴」などの音)クヱ[#「ヱ」は小文字](kwe「花」「化」などの音)およびグヮグヰ[#「ヰ」は小文字]グヱ[#「ヱ」は小文字]などの拗音があったが、これらは第一期まではまだ外国式の音と考えられたであろうが、平安朝以後、漢語が多く平生《へいぜい》に用いられるに従って国語の音に加
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