も語頭以外にも用いられたのである故、eとyeとがすべての場合に同音に帰したとすれば、eよりもむしろyeになったとする方が自然である。何となれば、eになったとすれば、語頭以外のeはその前の音の終母音と直接に結合して、古代国語の発音上の習慣に合わないからである。しかし、またもとのeとyeとの区別が失われて、新たに語頭にはeを用い、語頭以外にはyeを用いるというきまりが出来たかも知れない。そんな場合にも、このeとyeとを同じ文字で書いたことは、東京語における語頭のガ行音と語頭以外の鼻音のガ行音とを文字に書きわけないのによっても理解することが出来る。かようなわけで、eとyeとがすべてeになったとする説は極めて疑わしい。
 (三) 次いで語頭以外の「は」「ひ」「ふ」「へ」「ほ」の音が「わ」「ゐ」「う」「ゑ」「を」と混同するようになった。これは「は」等の音の初の子音Fが唇の合せ方が少なくなり同時に有声化してw音に近づき遂にこれと同音となったもので(「ふ」はwuとなったのであるが、wuの音はなかったためuになった)、かような傾向は既に奈良朝から少しずつ見え、平安朝初期においても「うるはし」(麗)の「
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