一定数の音単位以外は言語の音としては用いることなく、外国語を取入れる場合でも、自国語にないものは自国語にあるものに換えてしまうのが常である(英語のstickをステッキとしたなど)。
かように或る言語を形づくる音単位は、それぞれ一をもって他に代え難い独自の用い場所を有する一定数のものに限られ、しかも、これらは互いにしっかりと組合って一つの組織体または体系をなし、それ以外のものを排除しているのである。
以上のような音単位は、一つ一つにはもはや意味を伴わない、純然たる音としての単位であるが、実は音単位としてはまだ究極に達したものでなく、その多くは更に小さな単位から成立つものである。例えばカはkとaとに、サはsとaとに、ツはtとsとuとに分解せられるのであって、これらの小さな単位が一定の順に並んで、それが一つに結合して出来たものである、このことは、これらの音を耳に聞いた上からも、また、これらの音を発する時の発音器官の運動の上からも認められることであって、これらの音の性質を明らかにするには是非知らなければならないことであるが、しかし、かようなことを明らかに意識しているのは専門学者だけであって
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