場合にはただ一つで、或る場合にはいくつか組合わされて、意味を有する箇々の言語単位の種々様々な外形を形づくっているのである。かような言語の外形を形づくる基本となる音の単位は、国語においては、例えば現代語の「あたま(頭)」はア・タ・マの三つ、「かぜ(風)」はカ・ゼの二つ、「すこし(少)」はス・コ・シの三つ、「ろ(櫓)」や「を(尾)」はそれぞれロ又はオの一つから成立っている。
 かように、言語を形づくる基本たる一つ一つの音の単位は、単語のように無数にあるものではなく、或る一定の時代または時期における或る言語(例えば現代の東京語とか、平安朝盛時の京都語など)においては或る限られた数しかないのである。すなわち、その言語を用いる人々は、或る一定数の音単位を、それぞれ互いに違った音として言いわけ聞きわけるのであって、言語を口に発する時には、それらの中のどれかを発音するのであり、耳に響いて来た音を言語として聞く時には、それらのうちのどれかに相当するものとして聞くのである。もっとも、感動詞や擬声語の場合には、時として右の一定数以外の音を用いることがあるが、これは、特殊の場合の例外であって、普通の場合は、
前へ 次へ
全70ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
橋本 進吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング