舌の中ほどを高くして発する音)<i[#「i」はウムラウト]><e[#「e」はウムラウト]><o[#「o」はウムラウト]>であるとし(金田一氏)、あるいは、母音の前にwの加わったワ行拗音<−wi><−we><−wo>であるとし、あるいは、イ段エ段では母音の前にy(音声記号〔j〕)の加わったヤ行拗音<−yi><−ye>であるとし、オ段では中舌母音<−o[#「o」はウムラウト]>であるとする説(有坂氏)などある。私もイ段は−iに対して−ii[#最初の「i」はウムラウト](i[#「i」はウムラウト]は中舌母音)、エ段は−eに対して−※[#「※」は発音記号で「e」を180度回転させた形、145−11]iまたは−※[#「※」は発音記号で「e」を180度回転させた形にアクサン、145−11]e(※[#「※」は発音記号で「e」を180度回転させた形にアクサン、145−11]は英語にあるような中舌母音)、オ段は−oに対して中舌母音o[#「o」はウムラウト]であろうかという仮定説を立てたが、まだ確定した説ではない。
以上述べた所によれば、奈良朝における諸音の発音は、これに相当する仮名の現代における発音に一致するものが甚だ多いのであって、これと異なるものは「ち」「つ」「ぢ」「づ」およびハ行の仮名に相当するものであり、サ行およびザ行の仮名にあたるものも、或るは現代の発音と違っていたかも知れない。当時の音で、現代普通に用いられないものはヤ行のエにあたるye、ワ行の「ゐ」「ゑ」「を」にあたる<wi><we><wo>であり、「ぢ」「づ」と「じ」「ず」とは、現代語では普通発音の区別がないが、奈良朝には、おのおの別々の音であった。「き」「け」「こ」「そ」「と」「の」「ひ」「へ」「み」「め」「よ」「ろ」および「ぎ」「げ」「ご」「ぞ」「ど」「び」「べ」の十九の仮名の一つ一つにあたるそれぞれ二つの音は、一つは現代語におけると同じ音またはこれに近い音であるが(ただし「ひ」「へ」の子音は現代語と違い、「そ」「ぞ」の子音も現代語とちがっていたかも知れない)、他の一つは、これに近いがそれとは違った(現代の標準語には普通に用いられない)音であった。
以上のように奈良朝においては、現代よりは音の種類が多かったのであるが、しかし、それはいずれも短音に属するもので、「ソー」「モー」のような長音に属するものはない。また
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