ノついても、もう少しこれらの音がどういう場合にあらわれるかについて考えるがよかろうと思います。十三の仮名の中「エ」にあたる音の正体は既に判ったのでありますから「エ」を除いた十二の仮名について、もう少し考えておくことが必要だと思うのであります。そうして古典を読んだりする上においてもむしろその方が大切だと思います。
「キ」にあたる万葉仮名が二類に分れていると言いましたが、この「キ」が二つに分れるといったのは、今日の我々に判りやすいように言ったのであります。実際は、古代に互いに違った二つの音があった。それが後になって一つの「キ」の音になって、「き」の字で書かれているのであります。これを後世から見れば、「き」の音が、古く二つの別の音に分れていて、別の万葉仮名で書かれているということになります。古代における事実としては、そんな二つの音があったということだけでありますが、後世の我々には、「き」が二つに分れていると言った方が解しやすかろうと思います。事実は右の通りです。
さて、古代においては「キ」も「ヒ」も「ミ」もそれぞれ二つに分れているのであります。それらの音は勿論《もちろん》互いに違った別々
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