めて、そうして、どういう語のどこが濁音であるか、どこが清音であるかということを一々の語について区別して、そうしてその証拠とすべき実例を挙げております。それが三冊あるのであります。初めに清濁相対する万葉仮名の表がありまして、一番初めに『古事記』の仮名を出し、どんな文字は清音、どんな文字は濁音と区別してあげてあります。次に『万葉集』『日本紀』の仮名についても同様で、以上三種の書について仮名の清濁の区別を挙げてあります。それから後は「ア、イ、ウ、エ、オ」の順で単語を出して、どこが濁るか、どこが濁らないかということを古典から例証を挙げて示しているのであります。この書によると、例えば「騒」という意味の「さわぐ」の「ぐ」が昔は清音で「く」であった。あるいは「仇」「敵」という意味の「あだ」は昔は「あた」で人麿《ひとまろ》の歌の「あたみたる虎《とら》が吼《ほ》ゆる」の「あた」を清音の仮名で書いてあります。近畿地方等で「狐があたんする」と言いますが、この「あたんする」は復讐するということであります。これも「あたみ」をするということで、動詞で「あたみ、あたむ、あため」と活用するものでありますが、それが名詞
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