それだけでもともかく日本語のあらゆる音を書くことが出来る訳で、その仮名の数というものは定まっている。もし日本語に無数の違った音があるならば、きまった数の仮名で書けるはずはないのであります。勿論《もちろん》これは、仮名が四十八字あるのでそれで違った音は四十八しかない、という訳ではありません。例えば「キ」と「ヤ」とはそれぞれ違った音ですが「キャ」という音は「キ」でもない「ヤ」でもない違った音で、これもキとヤの字で書く。キとヤとキャと三つの違った音が二つの文字によって書かれるのであります。かように、文字の使い方によって別の音も表わすことがありますから、違った文字が四十八しかないから違った音も四十八しかないというのではありません。しかしながら、それでもそう沢山の音がある訳ではなく、一定数しかないのであって、それも存外多くないのであります。日本の仮名は「キ」という音なら「キ」として一つの字で表わしますけれども、キの音を分解してみれば更にkの音とiの音とに分解できます。こんなに分解してみると、違った音の数はもっと減るのであります。かように分解してみると、東京あたりの標準的発音においては二十五ぐらい
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