れと同じように「い」と「ゐ」、「お」と「を」は発音が違っておったとすれば、これを違った仮名で書き、決して混同することがなかったのは当り前のことであります。そのことは賀茂真淵《かものまぶち》の弟子の加藤美樹《かとううまき》の説として『古言梯《こげんてい》』の初めに出ております。また本居宣長《もとおりのりなが》翁《おう》もやはり『古事記伝』の初めの総論に「仮字《かな》の事」という条に、明らかに音の区別であったといっているのであります。それから富士谷成章《ふじたになりあきら》もやはりそう考えておったのでありまして、本居宣長の時代になりますと、古代には、後に至って失われた発音の区別があったのであって、仮名の使い分けはこの発音の区別によるものであるということが、立派に判って来たのであります。そうして本居宣長翁は、その実際の音を推定して「を」は「ウォ」(ローマ字で書けばwo)であり、「お」は純粋の母音の「オ」(すなわちo)であると言っておられます。これは正しい考えだと思います。ワ行の「ゐ」「ゑ」「を」は、「ウィ」「ウェ」「ウォ」(wi、we、wo)であったと考えられるのであり、それに対して、ア行の
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