》の巻筆《まきふで》』(巻三、第三話)に、堺町《さかいちょう》の芝居で馬の脚になった男が贔屓《ひいき》の歓呼に答えて「いゝん/\と云《いい》ながらぶたいうちをはねまわつた」とあるが、この「いゝん」は『落窪物語』の「いう」と通ずるもので、馬の嘶きを「イ」で写す伝統が元禄の頃までも絶えなかったことを示す適例である。
「お馬ヒンヒン」という語はいつ頃からあるかまだ確かめないが、一九《いっく》の『東海道中膝栗毛』初編には「ヒイン/\」または「ヒヽヒン/\」など見えている。多分もっと以前からあったのであろうが、これはhiの音が既に普通に用いられていた時分のことであるから、あっても差支《さしつかえ》ない。
底本:「古代国語の音韻に就いて 他二篇」岩波文庫、岩波書店
1980(昭和55)年6月16日第1刷発行
1985(昭和60)年8月20日第8刷
底本の親本:「国語音韻の研究(橋本進吉博士著作集4)」岩波書店
1950(昭和25)年
入力・校正:久保あきら
1999年11月9日公開
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