目をつぶってしまった。小さな体はいたいたしく痩せおとろえて、薬ももう[#「もう」に傍点]呑んでも呑まなくてもよい様な頼みすくない容体に刻一刻おちていった。母は夜も一目も寝ず帯もとかず看護した。信《のぶ》は体を方々いたがった。母がま夜中に、このあわれな神経のたかぶった病児の寝付かぬのを静かになでつつ
信や、くるしいかい?
と聞くと
うん[#「うん」に傍点]。苦痛をはげしく訴えず只静かにうなずく。
じき直りますよ。直ったらあの嘉義《ここ》へ来る途中の田の中にいた白鷺を取って上げますからね。と慰めると
うん[#「うん」に傍点]。とまた。その頃はもう衰弱がはげしくて、口をきくのも大儀げであったがしっかり[#「しっかり」に傍点]返事していたそうである。子供心にも直り度かったと見えて死ぬ迄薬丈けは厭やといわずよく呑んだ。体温器も病気馴れた子でひとりでわきの下に挟んでいた。夕方になると、土人の家の樹に啼く梟の声は脅かす様な陰鬱の叫びを、此廃居に等《ひと》しいガラン堂の病院にひびかせ、その声は筒抜けに向うの城壁にこだまを返して異境に病む人々の悲しみをそそった。
病苦で夢中というよりも死ぬ迄精
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