瓢作り
杉田久女

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)瓢《ひさご》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一体|瓢箪《ひようたん》だらうか

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「くくり」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ポト/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 今年私は瓢《ひさご》作りを楽しみに、毎朝起きるとすぐ畠へ出てゆく。
 まづ門傍のポプラの枝へはひ登つて、ぶらりと下がつてゐる大瓢が一つ。これはまるでくくり[#「くくり」に傍点]のない、丁度貧乏徳利みたいにそこ肥りのした奴。私がこないだ虚子先生にお目にかかりに別府迄行つてきて、汗の単帯をときすてるとすぐ見に行つたら、ほんの二日の間に見違へるほど快よくまつ青く太つてゐた。あんまりのつぺりとくくりがないので一体|瓢箪《ひようたん》だらうか白瓜か、もしくは信州辺でゆふご[#「ゆふご」に傍点]と言つてゐるかんぺうを作る瓜なのか、などと家中で評定とり/″\だつたが、やはりずぼらながら瓢箪であるらしい。実に大まかな気楽げなかつかうをして、夕立雨の時などはうぶ毛の生えたまつ青な肌をポト/\と雫がつたふ。夕立晴の雲がうごく頃には、柄の長い純白な瓢の花が、涼しげに咲き出す。この外にもポプラの樹に這ひついてゐる瓢が三本。之れはアダ花が咲くのみで、まだドンな形のとも見当がつかない。
 一体うちでは棚をつらう/\と話しあつてゐる中に、樹に垣に地面にどの蔓もが青々と這ひまはり、そこら中に花が咲き出したのであつた。
 さて私は、茄子や葉鶏頭の露にふれつつ径を歩むと、そこには瓢の葉をきれいにまきつけた低い垣根が、あちこちに長瓢をぶら下げてゐた。この瓢箪は頸の長い、瓢逸ないかにもごま[#「ごま」に「(ママ)」の注記]な呑気げなかほして、一とゝころに四つも五つもよりあひ、はては蔓が重くなつて地べたに尻を落ちつけてしまつてゐるのもある。こつちのえにしだの枝に捲きついてゐる一尺余りの長瓢は、丁度窓から見るのにころあひな長短で、かつかうよく宙ぶらになつてゐた。そしてその一つの蔓先は、隣の爺さんの畠へ垣根ごしに侵入し、そこに尻曲りの長瓢が、くびをもたげかげんに二つ。ころりと地上に露出してゐる。そこぎりで蔓先をとめて
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