し」に傍点]と投げ出され、地上に輪をえがいては互に近づきぶつかりあい飛び離れしてつくる処もなく廻っている緊張した光景を写生している。句の表には二つの独楽丈がよまれているが、其周囲に嬉々と手をうち、けしかけている童べらの姿も何となく聯想させられる。
第三句では、あばれ独楽という大胆直明な言葉で、落葉を蹴らしつつ奔放に廻り狂い、やがて速度をゆるめて落葉の中に静止して仕舞う迄の動作が写されている。
第四句に至ると、赤い美しい独楽がただ一つ。くすんだ落葉の大地に、きりきりと鮮かな旋律をもてまわり澄みつつあるというので、五句中一番此句が熱もあり、赤き独楽[#「赤き独楽」に傍点]という言葉もまわりすみたる[#「まわりすみたる」に傍点]という表現も印象的で、作者の高潮した感興も窺われる。
第五句目は此連作としては、平坦である丈にやや弱い感じが有りはしないだろうか。
此連作落葉という消極的なものに、活動性の独楽を配してほうふつとさせる近代写生の的確さ、中七字にえがきわけられた各々の独楽の活動的な見方、あらわし方に学ぶべき点があると思う。
[#天から2字下げ]鶴一羽高歩みして春の水 あふひ
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