激されつつ成長した事も面白くおもわれる。
 台北の官舎では芭蕉や仏桑花、蘭など沢山植えてあったが、私のまっ先に思い出すのは父が一番大切にしていた一株の仏手柑である。指をもつらした様な面白い形の仏手柑はもいで籠に盛られて父の紫檀の机の上や、彫刻した支那の大テーブルの上に青磁の花瓶などと共にかざられていた。
 仏手柑は香気が高くて雅致のあるものだった。
 台湾では文旦という形の尖ったうちむらさきや普通の丸いざぼんや、ぽんかん、すいかん(ネーブル)等を籠に入れて毎日の様土人が売りにきた。
 ぽんかんの出盛りの頃になると百も二百も買って石油鑵に入れておいては食べ放題たべた。お芋だのお菓子の嫌いだった私は、非常に果物ずきで、蜜柑畠には入って、枝のぽんかんをもいでは食べ食べした事や、唐黍をかじり、香りの高い鳳梨をむいたり、びろど[#「ろど」に「(ママ)」の注記]の様な朱欒の皮をむきすてて平らげたり、八九段もついているバナナの房を軒に吊しておく楽しみなど、すべて香気のつよいしたたる様な熱帯地方の果物のうまさを思い出すと今でもよだれが出る様で、実際よくもあんなにたべられたものと思うくらい。お正月など、
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