が、私はかの、
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青丹よし 寧楽の都はさく花のにほふがごとく今さかりなり
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寧楽朝を桜花になぞらえて謳歌した万葉歌を日頃から愛誦している。
桜花の美は百花を圧して、ふじやま[#「ふじやま」に傍点]や歌麿北斎と共に世界的となり、ワシントンの空にさえ咲き匂う時代となった。
願わくば花の下にて我死なんとさえうたった歌人もあるのに、我さくらの国の女流俳人はこの花をいかに観じ、いかにたたえているであろうか?
名高い秋色桜の事をおもいうかべつつ、私は興味をもって、古今の俳書から少しばかり花の句をあさって見た。
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山桜散るや小川の水車 智月
かち渡る流早しや山桜 かな女
あふ坂や花の梢の車道 智月
これを見てあれへはゆかん山桜 りん女
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数年前の春だった。寂光院へいそぐ道すがら、次第に山深くいにしえの大原御幸道にわけ入った時、ふと傍らの渓流に一本の山桜がうす紅の葉をかざして咲き傾いているのに気がついた。そのほとりには古びた水車が、のどかな水音をはじき返し花の木かげには、刈り束ねた柴が、
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