みている人も花片をあびてしまった光景。近代写生が非常に精緻となり、写生の技も昔より長足の進歩をしている事がわかる。

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布団迄朝の寒さや花の雪  その女
三絃の拍子にかゝるさくらかな  同
花は世のためしに咲く[#「ためしに咲く」に傍点]や一と盛り  すて女
唯かへる心で出たにはつざくら 千代
晩鐘を空におさゆる[#「おさゆる」に傍点]さくらかな  同
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 之等の昔の句にも捨てがたい風情はあるが、又教訓、比喩主観が露出していて、文芸的に価値の低い句も大部分をしめている。近代女流俳句は写生に立脚して、古句よりはるかに純文芸的に鋭敏に、或は夕風にゆらぐ一朶の花を写し、或は花人を叙し、花の雨嵐の花等あらゆる桜花を凝視して、元禄天明女流の描きえなかった領域までもよみこなし、量質共に昔の句に優るとも劣ってはいない。
 わが敷島の桜花の美は、近代女流によってあます所なく詠みつくされたと断定しても決して過言ではあるまいと、私は思うのである。

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花衣ぬぐやまつはる紐いろ/\  久女
嵐山の枯木もすでに花曇り  同
野々宮を詣でじま
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