予が半生の懺悔
二葉亭四迷

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)寧《いっ》そ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三|馬《ば》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)益※[#二の字点、1−2−22]迫って
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 私の文学上の経歴――なんていっても、別に光彩のあることもないから、話すんなら、寧《いっ》そ私の昔からの思想の変遷とでもいうことにしよう。いわば、半生の懺悔《ざんげ》談だね……いや、この方が罪滅しになって結句いいかも知れん。
 そこでと、第一になぜ私が文学好きなぞになったかという問題だが、それには先ずロシア語を学んだいわれから話さねばならぬ。それはこうだ――何でも露国との間に、かの樺太千島《かばふとちしま》交換事件という奴が起って、だいぶ世間がやかましくなってから後、『内外交際新誌』なんてのでは、盛んに敵愾心を鼓吹する。従って世間の輿論は沸騰するという時代があった。すると、私がずっと子供の時分からもっていた思想の傾向――維新の志士肌
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