mの詩人は皆東洋の詩人に勝るように思っていた。作の新旧を論じて其価値を定めていた。自分は此様《こん》な下らん真似をしていながら、他《た》の額に汗して着実の浮世を渡る人達が偶《たまたま》文壇の事情に通ぜぬと、直ぐ俗物と罵《ののし》り、俗衆と罵《ののし》って、独り自《みずか》ら高しとしていた。独り自ら高しとする一方で、想像で姦淫して、一人で堕落していた。
 ああ、恥かしくて顔が熱《ほて》る。何たる苦々しい事であった。私は当時の事を想い出《いだ》す度《たび》に、人通りの多い十字街《よつつじ》に土下座して、通る人毎に、踏んで、蹴て、唾を吐懸けて貰い度《たい》ような心持になる……

          四十四

 文学の毒に中《あて》られた者は必ず終《つい》に自分も指を文学に染めねば止まぬ。私達が即ち然うであった。先ず友が何か下らぬ物を書いて私に誇示《ひけらか》した。すると私も直ぐ卑《さも》しい負ぬ気を出して短篇を書いた。どうせ碌な物ではない。筋はもう忘れて了ったが、何でも自分を主人公にして、雪江さんが相手の女主人公《じょしゅじんこう》で、紛紜《ごたごた》した挙句に幾度《いくたび》となく姦淫する
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