ス時だろう?」
「まだ早いです、まだ……」
と私が狼狽《あわ》てて無理に早い事にして了う心を松は察しないで、
「もう九時過ぎたでしょうよ。」
「阿父《とう》さんも阿母《かあ》さんも遅いのねえ。何を為《し》てるンだろう?」
と又|欠《あく》びをして、「ああああ、古屋さんの勉強の邪魔しちゃッた。私《あたし》もう奥へ行《い》くわ。」
私が些《ちッ》とも邪魔な事はないといって止めたけれど、最う斯うなっては留《とま》らない、雪江さんは出て行って了う。松も出て行《い》く。私一人になって了った。詰らない……
ふと雪江さんの座蒲団が眼に入《い》る……之れを見ると、何だか捜していた物が看附《みつか》ったような気がして、卒然《いきなり》引浚《ひっさら》って、急いで起上《たちあが》って雪江さんの跡を追った。
茶の間の先の暗い処で雪江さんに追付《おッつ》いた。
「なあに? ……」
と雪江さんの吃驚《びッくり》したような声がして、大方《おおかた》振向いたのだろう、面《かお》の輪廓だけが微白《ほのじろ》く暗中《あんちゅう》に見えた。
「貴嬢《あなた》の座布団を持って来たのです。」
「あ、そうだッけ。忘
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